ヤオコー川越美術館はいかがですか?
川越には、優れた美術館博物館が多いと思う。川越市立美術館、川越市立博物館、世界遺産の川越祭りを紹介している川越祭り会館、老舗和菓子屋の亀屋のコレクションである山崎美術館、春日局の化粧の間が現存する事で有名な喜多院・・・
中でも、ヤオコー川越美術館は、私のとっておきの場所だ。川越氷川神社の丁度、裏手側、新河岸川を渡った所にある。
いつも参拝客で込み合う川越氷川神社。
展示室はたった二部屋。入場料も、大人は300円。ヤオコーカードの提示で200円とリーズナブル。入り口のギフトショップと、ピアノが設置されているラウンジのみの使用では、誰でも無料である。この気楽さが良いと思う。
作品も、季節や企画に合わせ、展示替えがまめに行われている気がする。
今回、特に印象に残ったのは、『秋日』という、目が覚めるような赤い紅葉の配置が大胆な絵画。
晩夏の湿気をまとい、まだ涼を求めるかのような色合いの作品が並んでいた。
本当に、毎回、季節感や興味深いテーマをふらっと立ち寄っては楽しめる美術館になっている。
建築家は、伊藤豊雄。1941年、京城市(現ソウル市)生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。
近年、いわゆるホワイトキューブという代名詞に代表されるような、真っ白い空間で作品に集中させる造りの美術館が主流とされていたが、こちらはそれらと一線をかす。グレーという壁面を背景に、絶妙な位置に配置された小窓や、独特なオブジェが、また、作品を鑑賞する鑑賞者の眼をも肥えさせてくれると気付いた。ホワイトキューブを越えた、新たな独自性を兼ね備えた美術館の型と言っても過言ではないと思う。
美術館の動向として、『芸術の墓場』『オーラの消失』など、問題点や矛盾点ばかりが浮き彫りとされがちだったが、この美術館は、非常にコミュニティに開かれた空間となっており、物理的にも、感覚的にも、絵画との距離感が近いように思える。ラウンジでは観覧者参加型のピアノコンサートなども定期的に行われ、とても開放された親しみやすい場所となっている。
作品も、繰り返すがグレーの壁と、特徴的な建築により、より際立ち、いわゆる、『墓場』などではなく、逆に、芸術が生きる場所、活き活きと息吹を発する場所となる事に成功している。
一年を通して、気軽に楽しめる美術館 ー ヤオコー川越美術館には、いわゆる『今、ここで』しか体験出来ない小さな感動が、確かにある。
もっと色々な人に知ってもらいたい。散歩の途中でふらっと立ち寄り、良質な絵画を愛でるような感覚で、今後も、市民の憩いの場として愛され、育ってゆく美術館であってほしい。
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