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ヤオコー川越美術館はいかがですか?

 川越には、優れた美術館博物館が多いと思う。川越市立美術館、川越市立博物館、世界遺産の川越祭りを紹介している川越祭り会館、老舗和菓子屋の亀屋のコレクションである山崎美術館、春日局の化粧の間が現存する事で有名な喜多院・・・

 中でも、ヤオコー川越美術館は、私のとっておきの場所だ。川越氷川神社の丁度、裏手側、新河岸川を渡った所にある。


いつも参拝客で込み合う川越氷川神社。



 

裏道に回ると、新河岸川が流れている。

そこを渡ると・・・

グレーのモダンな建築。ヤオコー川越美術館だ。

言わずと知れた、スーパーマーケット ヤオコーが所蔵するコレクションの美術館で、三栖右嗣の作品が主である。別名を三栖右嗣記念館とも言う。
もともと、ヤオコーの創業者とも言える、故川野氏が購入した三栖氏の作品をきっかけに両者の交流が始まり、2012年に、ヤオコー120周年事業として、コレクションを公開する美術館創設に至ったという。
三栖右嗣は、1927年、神奈川県に生まれ、東京芸術大学卒業。埼玉県比企郡ときがわ町にアトリエを構えた。リアリズムに重点が置かれた作家だ。

まず、美術館の立地が良い。神聖な空気をまとう氷川神社や、こじんまりとして癒される新河岸川の小径が(春には桜の名所にもなる)、自然と心を美術館へと逸らせる。嫌でも期待感は高まり、美術館へ訪れる時間が、本当に特別なものとなるだろう。
 
今回は、主に紅葉を描いた色鮮やかな様子の作品が多かった。

展示室はたった二部屋。入場料も、大人は300円。ヤオコーカードの提示で200円とリーズナブル。入り口のギフトショップと、ピアノが設置されているラウンジのみの使用では、誰でも無料である。この気楽さが良いと思う。


作品も、季節や企画に合わせ、展示替えがまめに行われている気がする。

今回、特に印象に残ったのは、『秋日』という、目が覚めるような赤い紅葉の配置が大胆な絵画。


ちなみに、前回訪れたのは9月。その時は、このような展示だった。

晩夏の湿気をまとい、まだ涼を求めるかのような色合いの作品が並んでいた。


本当に、毎回、季節感や興味深いテーマをふらっと立ち寄っては楽しめる美術館になっている。

建築家は、伊藤豊雄。1941年、京城市(現ソウル市)生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。

近年、いわゆるホワイトキューブという代名詞に代表されるような、真っ白い空間で作品に集中させる造りの美術館が主流とされていたが、こちらはそれらと一線をかす。グレーという壁面を背景に、絶妙な位置に配置された小窓や、独特なオブジェが、また、作品を鑑賞する鑑賞者の眼をも肥えさせてくれると気付いた。ホワイトキューブを越えた、新たな独自性を兼ね備えた美術館の型と言っても過言ではないと思う。


美術館の動向として、『芸術の墓場』『オーラの消失』など、問題点や矛盾点ばかりが浮き彫りとされがちだったが、この美術館は、非常にコミュニティに開かれた空間となっており、物理的にも、感覚的にも、絵画との距離感が近いように思える。ラウンジでは観覧者参加型のピアノコンサートなども定期的に行われ、とても開放された親しみやすい場所となっている。


作品も、繰り返すがグレーの壁と、特徴的な建築により、より際立ち、いわゆる、『墓場』などではなく、逆に、芸術が生きる場所、活き活きと息吹を発する場所となる事に成功している。


一年を通して、気軽に楽しめる美術館 ー ヤオコー川越美術館には、いわゆる『今、ここで』しか体験出来ない小さな感動が、確かにある。

もっと色々な人に知ってもらいたい。散歩の途中でふらっと立ち寄り、良質な絵画を愛でるような感覚で、今後も、市民の憩いの場として愛され、育ってゆく美術館であってほしい。



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こんにちは。学生時代、文化史と美術史を専攻した後(ロンドン留学含む)、美術館学芸業務補助を経て、カルチャースクール勤務。現在、在宅で翻訳の勉強中。主に、①芸術事の感想(展覧会、舞台、映画、小説など)、②英語で書かれた世界各国の美術館図録や美術評論、③英語圏の絵本や児童文学、文芸作品、④英語の歌詞、⑤趣味の朗読やよみきかせ、歌、⑥日常の散歩や旅行記、生活の一コマなど・・日英語で記してゆきたいです。

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